1 ソーラーパネルの特性測定
ソーラーパネルの特性は、一般の半導体などに比べ詳細にはデータを見ることが出来なかったので
調べてみた。
1.1 アクリル板や影による影響
ソーラーパネルは防雨構造でそのまま屋外に設置できるとの事だったが
耐候性のためにケースに入れることを計画している。
その際、防雨のためのアクリルパネルや、強度補強用の構造から影が出来てしまう可能性もあり、
出力に影響があるかどうか調査した。
写真1.1 (左) テスト風景 (中央) 角材の影 (右) 薄曇り状態
1) ソーラーパネルを太陽に直角に向け、遮蔽無しで最大出力を測定 ; 写真(左)
2) ケースの表面の防雨のために波板アクリル板をかぶせた状態
3) 15mm角材をソーラーパネルの前に 水平(長手方向)に置いた場合
4) 上と同様 角材を垂直(短辺方向)に置いた場合 ; 写真(中央)
以上までは快晴状態
5) 時間経過して薄曇り ( 雲を通して太陽が輝いて見える程度の薄い影 )の状態 ; 写真(右)
表1.1 影による出力の変化
状態 |
出力電流 |
減衰率[%] |
遮蔽無し |
1.9 |
0 |
波板 |
1.7 |
11 |
15mm角材水平(長辺) |
1.2 |
37 |
15mm角材垂直(短辺) |
1.8 |
5 |
薄曇り |
0.5 |
74 |
・ 1.9A出力時、ソーラー出力開放電圧 20.0V
|
グラフ1.1 影による出力の変化グラフ
|
[ 結果と考察 ]
・ 波板で11%も低下したのは予想していなかったが耐候性向上のためには仕方がない
・ 角材は短辺方向に幅15mmの影がある場合は5%と小さいが、長辺方向だと37%も減衰する
数10mm平方の影の場合も極端に低下する
これはパネルのセルが直列接続で、一部のセルの発電力が低下すると全体電流を阻止すると思われる。
これから、ケースの補強材は短辺方向にのみ入れることとする。
補強は、ケースの強度は他の方法でも強くすることは可能だが、防雨用アクリル波板は、
長手方向1mの中間で支えておきたいので必要だ。
・ 目で見た太陽光量はさほど小さく感じない薄曇りでも、74%も低下する事が解り驚きだ。
しかし、眼には瞳による光量調節機能があり、見た目の明るさから光量に差を感じられないためかと思われる。
1.2 ソーラーパネルと太陽光の入射角による出力
5月5日正午頃に測定。 太陽高度は水平面から約70度の状態でソーラーパネルを水平に置いた状態から
次第に傾け、鉛直面、更に通り越して前のめり状態+30°までの出力を測定した。
写真 1.2 測定状態
角度は目測で分度器に合わせて設定した。
電流は負荷を短絡して測定。
グラフ1.2
[ 結果と考察 ]
・ 太陽高度約70°なので、水平面20°付近が出力最大になっている。
・ 90°付近までの測定結果は、設置が目視で精度が低いためにばらついているが
ほぼ三角関数で理論値を求めた結果、すなわち 太陽の照度と光束面積に発電量が一致している。
・ 90°を越えた付近は理論値より大きめに出力されている。
120°では、本来の太陽光は照射されない状態だが出力が出ている。
これは、直接光以外の散乱光や、周辺の反射光が照射されているためではないかと推測される。
*注) 45°の測定値と理論値ともに、やや凹状態に表示されているが、
45°だけが5°、他は10°刻みを等間隔目盛りで表示しているためである。
1.3 ひまわり発電予備テスト
ソーラーパネルの出力は、太陽光に直角に配置された場合最大となる。
常にパネルを太陽に直角になるようにモーター等で制御することを 「 ひまわり発電 」という。
将来実施することにより、どのくらい出力がアップするか、関心が高かったので事前にテストしてみた。
* 3つの状態で比較する
1) 固定位置 : 通常行われる方法で、昼に最大となるよう南に向け、その時に太陽光と直角となるよう配置
2) ひまわり : その時々で太陽光にパネルが直角になるよう向きを合わせる ( 出力最大のポイントを探す )
3) ひまわり傾斜固定 : 太陽の向きに追従して東→南→西 と方角のみ変え、水平面に対する角度は一定とする
これは、2)の簡便化手法で、1軸のみの追従で実施した場合を想定して測定。
これらは30分ごとに、3種の位置を変化させるよう、手で調整して測定した。
傾斜や方向を再現できるよう定規を使用した。
グラフ1.3 固定/ひまわり発電出力
|
表1.3 電力量比較
状態 |
電力量[Ah] |
比率[%] |
1) 固定 |
6.6 |
100 |
2)ひまわり
傾斜固定 |
7.7 |
117 |
2)ひまわり |
8.2 |
124 |
|
[ 結果と考察 ]
・ 3種の12:30までの充電量は位置固定に対し、ひまわり発電では 24%増加した。
この24%大きいとはいえ、想定していたより差がなかったので、将来ひまわり発電装置を製作しようとの
趣味の夢が少し萎んだ結果となった。
傾斜固定でのひまわり発電は17%アップ、実施するとしても 1軸のみの追従装置で良いと考える。
ひまわり発電を行わないとしても、季節ごとに傾斜角を調整することで簡単に効果を得れば良いと考えるが...
小田原市の太陽高度は 夏至時 78.1°、冬至時 31.3° と47°も角度が違うが
グラフ1.2の測定結果から、春分・秋分の高度 55°に設置しておけば、10%しか夏冬にも低下しないことが解る。
簡単な作業で、少しでも出力をアップさせるためには年2回傾斜の設定を変えれば良いことになる。
実施時期は 冬至・春分の中間の1月末と、夏至・秋分の中間の7月末。
その結果、太陽との角度誤差は12°となり、グラフ1.2で読みとれないほど ほとんど差がない。
三角関数で求めると cos 12°= 0.978 で 2%の差だけとなる。
ちなみに傾斜固定で cos 23.5°= 0.917 で約10%と、測定結果とも合致する。
1.4 充電電流の1日の変化
ベランダに仮設置した状態での1日の充電電流を10分ごとに記録した。
10分ごとにメーターを読み、記録するのは大変なので、一工夫し WEBカメラで10分ごとにコントローラを撮影し
測定終了後、画像からメーターの読みを記録した。 手法は別途紹介。
この副次効果で、メーターの視差をなくすことが出来、容易に測定できるので、今後活用したい。
グラフ1.4
[ 結果と考察 ]
・ フェンスにひもで仮にくくりつけた状態のため最大電流はやや少な目になっている
・ 正午までは快晴で綺麗なカーブになっていたが、午後になり薄曇りとなり時折やや厚めの雲も出てきた。
そのため測定の瞬間の雲の状態で上下変動している。
・ 最大電流を記録したのは12:20頃である。
本来の南中時12時、これは日本標準時の基準地:兵庫県明石であり、
小田原市は 東経139度9分なので 正午より16分早い 11:44分が最大になるはずである。
にもかかわらず、これより36分遅れている。 これは自宅敷地がやや西に振れているためである。
・ 午後から雲がでて綺麗なデータが取れなかったので、
イメージとして午前のデータを対称に仮想した全晴れ時のデータを推定した。
・ 各測定値を時間で累積した電力量を求めると、 晴天時の1日の充電量は9.5Ahとなった。
構想時に検討した負荷電力量、 通常時: 1.31 A * 3.5時間 を晴天比率 0.4で除した 9.6Ah
に図らずも同一値となった。
大きめの出力のソーラーパネルを選定したはずっだが、
実際の装置では、ケースに入れアクリル波板の減衰 11%、
ケースの補強用パイプの影の減衰 5%、
太陽高度に完全に合わせず傾斜を適当な角度に仮設置 10%、
などの影響で低下したと思われる。
以上の予備実験測定値から値から 最大出力 1.9A x 0.89 x 0.95 x 0.90 = 1.45Aと求められ、
本測定値の最大電流 1.45Aと合致し、予備実験でのデータの信憑性も確認できた。
今後システムを改良し、負荷の削減と出力電流向上策が必要な状況で、今後の改善を楽しめる。
|