[5] 波の影響
艇の前にある高い波に突入したとき、波と艇の相対速度により波が艇の底に当たる。
これは流体が面に当たることとなり、面に力を及ぼす。
下図の左から右への速度 v で斜めの板に当たるとき 板に及ぼす力 f は
f = ρ Q v sin θ
となる。
ρは 流体の密度、Qは流量、 v は流体の速度である。
力 f は 流体に押される力 Fr と、斜板を上に持ち上げる力 Ff に分解できる。
Fr は 艇の速度を落とそうとする力として働き、 Ff は 艇を持ち上げる力となる。
艇の安定度に影響する 持ち上げる力 Ff は
Ff = f cos θ で求められる。
これを実際の艇で見ると 下図のように前部の傾斜面がそれぞれの角度の斜板で前からの波を受けていることと同じである。
シミュレーションでは、 長さ方向の単位長さあたりを領域とし その部分の直線とみなした角度と面積で波を受けることによる力を求め、 外乱の力として計算した。
流体を受ける斜板の面積は、 測定で求められた横幅の面積として計算した。
艇を水平に置いたときの前の傾斜のみでなく、 艇が傾いて前が持ち上がった状態では 底の面積全てが波で持ち上げられる力を受けることとなり 極端に持ち上げる力が増加することが考えられ、結果もそのようになった。
艇の傾きに対する波の影響による前を持ち上げる力をグラフにしてみた。
波の高さ30cmでは 揚力がおよそ25kg位で飽和しているが、 50cmでは比例的に増加する。
波高30cmでは傾き5度以上では折れ線となっている。メッシュ化による誤差による影響と思われる。
浮力中心の座席位置による変化
[ 左グラフ ] 座席位置の変化では前に移動するに従い浮力中心が前に移動する。
艇の前後の中心 146cmとなる座席位置は、初期より20cm前となる
[ 右グラフ ] 縦横座標を入れ替えて表示したもの。
座席シート位置での変化より、波高が変わった事による変化が大きいことが解る
しかしながら、これらの結果から、最適位置や安定性への影響は見いだせない
* 話は横道に逸れるが、上式により水の流れが当たる力を求めることが出来る。
f = ρ Q v sin θ
流れを受ける面を 0.8m x 2m、流れの速度を6km/hとすると、受ける力 f は 4.44トンにもなる。
面が流れと直交している場合だが、それにしてもとてつもなく大きな力となりブローチングの恐ろしさを理解できる。
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