DIYのページ
No.20
ストーブ移動台車の製作
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2012.10
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居間の暖房に灯油ストーブを使用している。
妻の作業位置などにより ソファ付近、食事の時にキッチンからダイニング・テーブルへと、その都度移動している。
複数台のストーブを置くことはスペースの問題、点火・消化の手間と臭いなどで難がある。
移動のために 手で持ち上げ、前にぶら下げる形で運んでいた。
この姿勢は重心が体より前にあるため、ストーブの重さ以上に負担を感じていた。
そこで、常に台の上に置き、移動時には台車に変身する物を作ればよいと考えた。
要件
1) 安全性
重心を低く、地震対策、固定時の滑り止め、フェールセーフか極めて故障率の小さい構造とする。
2) 信頼性・耐久性
故障が無く、無調整なこと。 摩耗や変形が少なく長く使用可能なこと。
3) 操作容易性
短時間で簡単な操作により固定/移動の切り替えが出来ること。 1回の移動で2回の前後操作が必要。
4) 段差乗り越え量 5mm以上
居間と台所の境界に、ワンルームだが5mm程度の仕切り段差があるため
5) 最小サイズ
ストーブ本体より張り出しスペースが少ないこと
6) サイズ変更容易性
ストーブを将来取り替えた場合、大きい物にも対応できるよう変更が容易なこと
7) 工作容易性
方式検討
移動するには市販のキャスターを利用するのが簡便と考え決定。
台車を据置時に底面を下げ床に接し、移動時にキャスターから台車ベースを持ち上げるための方式を模索した。
初期のアイデア段階で、ロック機構など省略している。
評価後詳細に検討して製作する。
1) レバーにより回転板を回し、ワイヤーでキャスターユニットを引っ張る方法
ワイヤーの変わりにシャフトでリンク機構とすることも併せて検討する。
・ ワンタッチで移動・設置ができるメリット
・ 接地状況から三角関数の cos90°付近に近くなり 小さな力で操作できる。
・ 回転レバーをロックする機構も追加でなお簡便操作
・ 構造・製作に大きな困難はない
ワイヤの場合緩みの問題検討要
リンクの場合、自在軸受けをどうするか → 軸穴のクリアランスを大きめにして対応できるか?
2) キャスターユニットをレバーで押し下げ、ロックキーで固定する方法
・ 製作は簡単
・ 片側ずつレバーを開き、押し下げたままでロックキーを回し、レバーを収納位置に戻す手間が掛かる。
・ レバーの長さを長くすれば小さな力で操作可能。 てこの原理によるメリット。
3) パンタグラフ機構等でキャスターユニットを押し下げる方法
・ パンタグラフ機構は自作要。
・ 構造が複雑で製作難易度が高い。
・ 上下のガイドを設けるかパンタグラフで強度を持たすか要検討。 木工では強度確保が難。
・ パンタグラフの駆動方法はネジか? → 回転数 大で操作に時間が掛かる。
4) 偏心カムでキャスターユニットを押し下げる方法
・ 偏心カムは木工では難があり金属加工が必要
・ カムシャフトに大きなトルクが掛かり、金属か径の太い木製軸受けとする
・ カム機構部分の構造がやや大きめになり、左右長が増す。
・ 接地後にやや大きな操作する力が必要
5) シフト機構で台車を持ち上げる方法
・ 4個所の同期させて回転させる結合機構が必要で木工では製作困難
片側ずつ持ち上げてロックする方式にした方が製作可能性は高まるが、ストーブ重量のほぼ半分の力が必要
・ 上昇後左側の受けを設け、右側はロック機構を設ける
・
6) キャスターユニットをレバーで押し下げ、ストッパーで位置を保持する方法
2)の改良版。 1号機採用方式。
・ 製作は比較的容易
・ 左右順番に持ち上げる
ストーブの約半分の重量を押し下げレバーのテコの原理で約1/5,計10分の1の力で操作できるので楽
・ 持ち上げたときに、キャスタが水平になるようロック機構要
評価満点
1) 回転板ワイヤー
2) レバー、ロックキー
3) パンタグラフ機構
4) 偏心カム
5) シフト機構
6) レバー、ストッパー
安全性確保
10
9
9
5
8
8
9
信頼性・耐久性
10
5
6
4
6
7
8
操作容易
10
9
3
3
7
4
7
サイズ
5
4
4
3
3
4
4
サイズ変更容易性
5
3
5
5
5
3
5
工作容易性
10
6
6
1
4
3
8
評価
50
36
33
21
33
29
41
制作中は、まだDIYのページ開設計画がなかったので、途中段階の撮影は行っておらず完成の姿で。
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完成したストーブ移動台車 1号機
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構造は至ってシンプル。
ベースの両側にキャスターが付いた板が蝶番で結合されており、通常は斜めに持ち上がった状態。
そのためキャスターには重量はかかっていない。
前にある2分割されたバーが左右のキャスター取付板に結合しており、運搬時は中央を持ち上げ、
その後にあるロック駒に乗せ保持する。
その状態では、キャスター取付板は水平状態となり
キャスターが床面に押しつけられ、ベースは浮いた状態となる。 これで台車の移動が出来る。
ロック駒は、ベースに蝶番で取り付けられ前後に傾斜し、
中央にバーを支える溝がはまり込む。
バーは台車の重量で押し下げられるので、移動時はバーは傾斜状態を保てる。
キャスターの接地点とバー中央は、蝶番の軸を支点としてテコの原理で約1/5の力となるので、ストーブと台車の重量 約12kgに対し、操作力は 12/(2*5)=1.2kgとなり
操作は軽くできる。
前景
左側面
据え置き時 レバーは水平
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移動時 レバーは持ち上げられロック駒で保持
キャスター取付板とバーの結合部
キャスター取付板とバーの結合部 力が掛かるので、三角形の補助プレート、取付板を棒で挟むよう、全てをボンドで接着
前側は力を考え、キャスターをバーに近く配置
キャスターがやや後に寄ったが、ストーブの重心に対し 充分前に位置するので問題なし
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底面。 移動時の状態。 キャスター取付板が水平になっている。 ベース表面は3mmのベニヤ板なのでサンで補強
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裏面。 移動時の状態
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裏面。 設置時の状態
ストーブを搭載。 移動時の状態
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ストーブを搭載。 設置時の状態
ストーブ移動のデモ 動画
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使用して2年目の冬に入り、特に故障や不具合もなく便利に使っている。
難を言えば、キャスターのセット・復帰時に左右2つのレバーを別に操作しなければならない点くらいだ。
欲が出て 一挙動で出来る、案1)による、2号機をこの冬までに作ろうとも考えていたが、
自転車置き場製作にエネルギーを使ったので、この冬はこのままで。
その間、手製軸受けや、蝶番などのテクニックも経験し、ジグの活用も進んだので、案をブラシアップして製作したい。