参考情報  


1 レンズの収差について

 パノラマ写真の結合時、2枚の画像をいかにきれいにつなぐかを考えるうち、レンズの性質について調べてみました。

 レンズには像を結ぶとき 「 収差 」 と呼ぶ誤差により画像に狂いやボケを生じます。 2枚の画像間で同等の位置でつなぐことできれいにできあがりました。 この位置が、2枚の画像の重なり部分の 1/2 の位置ということになります。
 ( 全ての収差に対し満足は出来ませんが、一般的デジカメのレンズでの影響度が大きい要素を軽減できます。)


 レンズの理想的な結像は下記の条件を満たすことです。

 @ 物体上の 1 点から出た光は、像面上の 1 点に集まる

 A 物体が光軸に垂直な平面のとき、像も光軸に垂直な面に結ぶ

 B 物体と像の形が相似である


これに対し、光とレンズの性質により像の出来る状態に誤差を生じ、これを収差といいます。

収差には大別すると2種に分かれます。

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 ・ 色収差は、光にいろいろな波長が含まれていることにより起こります。
 
 同じ曲率のレンズでも屈折率は波長により異なるので、焦点距離が異なってしまうことで起こります。
その結果、単色光では1点に像が結んだとしても白色光
(*) では波長により像の位置が前後方向に異なり、像がぼやけたり色がついたりする結果になります。これを色収差と言います。 像の倍率が大きいほど影響も大きくなります。

 
(*) 白色光 とは...   多くの波長を含み色の付いていない光。例えば太陽光など。

 ・ これに対し、ザイデルの5収差は光の波長が1つの単色光
(**)でも起こります。

 色収差に対し、単色光でも生じるので単色収差とも呼ばれています。

 
(**) 単色光 とは...  波長が1つだけの光。 波長により色が決まる。 例えばレーザー光など。

それらの現象・原因を下に表します。

小区分 現象 原因 対処法 備考


軸上色収差 画面中心部分に色のにじみを発生させ、シャープさが低下する 光の波長の違いによって光軸上の結像位置が異なるため 絞り込む事によって目立たなくなる ・モノクロ写真でもにじみを生ずる。
・凸レンズと凹レンズの組み合わで改善できる。
・EDガラスの使用で改善。
倍率色収差 画角を持つ光軸外の光に対し発生する色のにじみで、シャープさを低下させる 光の波長の違いによって画面周辺部に行くに従って像倍率の違いが生じることによる 絞り込む事では改善されない







球面 収差 点の像が点にならずにぼやけた円形の画像になってしまう。   高屈折率ガラスを使用。
レンズ形状の工夫。凸レンズと凹レンズの組合わせによる回避。
・入射角が大きくなるほど大きくなる。
・口径の3乗に比例して大きくなる。
・光軸上でも発生するので軸上収差と呼ばれる。
コマ 収差 画角を持った光が、彗星のように尾を引いたような像を結ぶ。   絞り込む事によってある程度まで改善できる。 ・球面収差を良好に補正しているレンズでも、画角を持った光で発生する。
・口径の2乗と画角に比例する。
収差 背景や近景の著しい流れ(点像が楕円形にボケて流れてみえる)などとしてあらわれる。 軸外の光に対して、光軸に対して放射線方向と同心円方向との焦点が一致しないために起こるボケ。 絞り込む事によって目立たなくはなるが本質的には改善されない。 ・口径と画角の2乗に比例する
像面 湾曲 画面中心のピントは合っているのに周辺部はピントが外れる。 平面の物体から出た光が平面には結像されずに曲面になってしまうことによる。像を結ぶ位置が光軸からの円周方向の位置によりずれ、湾曲した像となる。 絞り込む事によって目立たなくはなるが本質的には改善されない。 ・口径と画角の2乗に比例する
歪曲 タル型 ビヤ樽のように変形した像になる。   絞り込む事では改善されない。
凸レンズと凹レンズの組み合わで改善できる。
・画角の3乗に比例する。
 すなわち、広角になるほど極端にこの影響を受ける。
 広角側で撮ることの多いパノラマ写真では最も影響を受けることが多い。
糸巻き型 糸巻きのように変形した像になる。  
陣笠型 タル型と糸巻き型が合わさった陣笠の形に変形した像になる。