Olympus C2100UltraZoom 380mm相当で撮影した写真7、 1600
x 1200 ピクセルを縮小したもの、
この画像の赤枠部分990 x 200を切り出したのが 写真8
雪の白の輪郭が収差の影響で色がにじんでいますがこの倍率で簡便に撮れるので仕方がないと考えています。
左側にレーダードームが取り外された建物部分が、右側に浅間神社富士山頂奥の院が写っています。
富士登山をした人でないと見られない映像を、麓の車が行けるところから撮影できることに驚きます。
3 デジカメの”テレ”はすごい、なぜ?
1つはデジカメのズーム倍率が比較的大きいこととレンズの明るさ、更には価格の差もあります。
3.1 フィルム用レンズとの違い
2つのデジカメと 35mm
フィルム 1眼レフカメラ用のズームレンズ Nikon
製のレンズの比較です。
|
焦点距離 |
明るさ F |
ズーム倍率 |
価格 [円](参考) |
W
ワイド端 |
T
テレ端 |
W
ワイド端 |
T
テレ端 |
デジカメ |
C2100UltraZoom |
38 |
380 |
2.8 |
3.5 |
10 |
|
E−10 |
35 |
140 |
2 |
2.4 |
4 |
|
銀塩カメラ
用レンズ |
35-70 |
35 |
70 |
2.8 |
2.8 |
2.0 |
89,000 |
35-135 |
35 |
135 |
3.5 |
4.5 |
3.86 |
63,000 |
75-300 |
75 |
300 |
4.5 |
5.6 |
4.0 |
69,000 |
[ 表 2 ] レンズのズーム範囲と明るさ
1眼レフ用レンズにもズーム倍率の大きい物がありますが、レンズの明るさがデジカメ用に比べ暗い傾向に
なっているのが解ると思います。正確に把握するにはレンズの口径と価格についても考えなければなりませんが
ここではデジカメのレンズは明るいものが作りやすいということがあります。
ここまで書くとビデオカメラのズーム倍率は更に20倍、30倍を売りにしていますから驚かない方もおられる
かもしれませんが、その理由は4項で説明します。
3.2 小さい画像を大きく見る方法
* フィルムカメラでは引き延ばして見ることで可能です。更にトリミングを使ってフィルムに写った画像の
一部だけを引き延ばして見れば更に目的の小さい対象物を大きく見ることが出来ます。
* デジカメでは
パソコン上で画像を拡大することはいとも簡単です。
最近デジカメの画素数はどんどん大きくなってきましたので拡大率も大きくなっています。
画素数と縦横ピクセル数は次のようになっています。
画素数 |
横ピクセル数 |
縦ピクセル数 |
デジカメ例 |
200万 |
1600 |
1200 |
Olympus C2100UltraZoom |
400万 |
2240 |
1680 |
Olympus E-10 |
[ 表 3 ] 画素数と縦横ピクセル数
画素数と縦横ピクセル数の関係は、面積の関係ですので画素数の平方根:ルートが
ピクセル数になります。
これに対し一般的なCRT/液晶 表示器の解像度は 1024
x 768 ピクセルですから
画素数に換算すると約80万画素相当で、200万画像の画像をそのまま表示しても画面
の1.56倍になります。400万画素のデジカメの場合は2倍にもなります。
先の月の画像のように
ホームページに掲載する画像の大きさはそれほど大きくないの
で全面に写った画像から目的の部分を切り出しても十分見れるわけです。
これはフィルムの時のトリミングして引き延ばすのと同じ事ですね。
しかしフィルムの現像でサービスサイズは安価に出来ますが、少し大きく引き延ばすと
1枚数千円もします。 これがデジカメでは簡単に出来てしまうのです。
当然引き延ばしやズームにはレンズの性能等から像の鮮明さが変わるのでこの評価
もしなければなりませんがこの点でもデジカメは有利そうです。
3.3 どの位デジカメの”テレ”はすごいか
はじめに掲載した実際の画像で実感していただけたかと思います。
望遠する目安として画角* から考えてみます。
画角は正確には水平画角、垂直画角、対角画角などがありますがここでは簡単に水平
画角で検討します。
[ 図 1 ] 画角の種類
|
水平画角とは画像がフィルムの水平方向に写る画像の角度です。
同様に垂直画角もあります。
対角画角とはフィルムの対角線に写る画像の角度です。一般にレンズなどの画角はこの対角で表現しますがここでは水平画角(以下単に画角と表現します)で説明を進めます。
厳密には条件として、写真レンズのフォーカスリングを無限遠に合わせた時の角度をいいます。
この画角が小さいほど小さい対象物がフィルム/センサに大きく写るわけです。
次に望遠レンズと広角レンズを比べて考えてみます。 |
[ 図 2 ] 標準/望遠レンズの画像、画角
|
レンズの焦点距離と、画像、画角の概念を図2に表しました。
レンズから焦点距離までの位置にフィルムまたはデジカメのセンサがあるとして標準レンズと、その2倍の焦点距離の望遠レンズの関係を示しました。
これで解るように 標準@ の画像、画角に対し 望遠Aでは幅、高さが半分の部分が同じ大きさ、すなわち倍の画像の大きさで写り、画角はおよそ半分になります。
ここで「およそ」といったのは厳密には以下のようになります。
フィルム/センサの幅を W、焦点距離を
f 画角を θ とすると
画角 θ = 2 x atan (( W / 2 )/ f ) の関係になり
三角関数で求めることになります。
しかし望遠系の数値になると、三角関数 atanの性質より、焦点距離に対し画角はほぼ反比例します。
35mmフィルムレンズ(Nikkor) の例は右の 表4
のようになっています。
|
焦点距離 |
画角(対角線) |
28 |
74 |
35 |
62 |
50 |
46 |
105 |
23°20’ |
180 |
13°40’ |
300 |
8°10’ |
600 |
4°10’ |
[ 表 4 ]
レンズの焦点距離と画角
|
3.4 ここで! デジカメの切り出しの威力
もう一度 月の拡大写真(下)をご覧いただきながら考えてみます。
もういちど [ 写真 2 ] 1600 x 1200
ピクセル [ 写真 3 ]月の部分を切り出し 300 x 225
ピクセル
|
図2の例で切り出した画角B を考えると 望遠で撮った紫の枠の横幅 Wt、画角 θt に対して
切り取った画像の幅、画角を Wc、θc とし、これを元の画像と同じ大きさで表示するとした場合、
およそ Wt : Wc = θc : θt となり
下の月の写真の例では Wt = 1600、Wc = 300、 θt =
10.34°なので
切り出した画像の換算画角 θc は
θc = θt x Wc / Wt
= 10.34 x 300 / 1600
= 1.94 °
同様に焦点距離に換算すると Wt : Wc =
fc : ft なので
fc = ft x Wt / Wc から
= 380 x 1600 / 300
= 2026
焦点距離 2026mm
換算で撮った画像と等価になります。
2000mmもの望遠レンズは特注扱いで数百万円になるのではないでしょうか。
銀塩レンズの数百mmにテレコンバータを2〜3段重ねて無理矢理撮影した画像は暗く、デジカメの
これらの画像より画質が劣化するかと思います。
画質は別としてこれほどの拡大した画像をデジカメでは簡単に撮影できるわけです。
4 デジカメでは何故ズーム比を大きく出来るか
4.1 デジカメセンサの大きさ
光学的にフィルムに比べるとセンサの大きさはまだ小さく大きい物でも1インチ、通常
2/3、
1/1.8インチが使用されています。
先ず、センサのサイズに対する画像の大きさは次のようになっています。
センササイズ |
幅 [mm] |
高さ [mm] |
対角線 [mm] |
1インチ |
12.8 |
9.6 |
16 |
2/3インチ |
8.8 |
6.6 |
11 |
1/2インチ |
6.4 |
4.8 |
8 |
1/3インチ |
4.8 |
3.6 |
6 |
35mmフィルム |
35 |
24 |
43 |
[ 表 5 ] センサのサイズと寸法
ここで解ることは35mmフィルムに比べ
デジカメのセンサの大きさはまだ小さいことを
覚えておいて下さい。
初期には
1/3、1/2インチサイズが使われていましたが、最近の高解像度(画素)
になるに従いセンササイズも大きくなり 400万画素では2/3インチ当たりが使われ
ています。
これでさえも
35mm フィルムの対角 43mm に比べると 11mmと 1/4 の大きさです。
4.2 焦点距離とセンサ寸法の関係
[ 図 3 ] センサ寸法と焦点距離
標準レンズの画角 θは 3.3 表4から 46° です。
2/3インチセンサの対角線長さ L は 11mm
です。
図3 から
この対角線長さの場合に画角 θ=46°となる焦点距離 f
を求めると
f = (L /2) x acot( θ/2)
= (11/2) x acot( 46 x 3.14 x 2 / 360 / 2)
= 14.4mm
と計算されます。
既に解っているように35mmフィルムカメラの標準レンズ 画角46°の場合の焦点距離は
50mmですが、これに比べ
1/3.5 の距離になっています。
4.3 レンズ口径と焦点距離
レンズ口径 D と開放F値 F
(レンズの明るさ) 焦点距離 f
の関係は次の式で表されます。
F = f / D
これから焦点距離に対するレンズ口径は
D = f / F
となり、同じ明るさ:F値のレンズに必要なレンズ口径は焦点距離に比例することになります。
これから 対角の小さなデジカメのセンサに必要なレンズ口径は小さくて済むことになり、
安価にまた光学的設計も容易になることから大きなズーム比や明るいレンズを作ることができます。
実際にはレンズの解像度や収差の問題などもあるようですが、ここでは大きさに関係することに
関してのみ考えてみました。
ビデオカメラのズーム倍率は 20倍を越えるものも多いですが、ビデオカメラのセンサーは
画素数で数十万画素、最近宣伝されているメガピクセルはすなわち百万画素を越えたところで
センサが小さいので、更に小さい口径で作れることによるものです。
レンズに装着するフィルタ径がレンズ口径にほぼ近いですが、一般のビデオカメラには
37mm
に対し、Olympus E-10 では 62mmを使用します。
5 おまけ情報 : 何故デジカメのセンサはインチ表示?
本来国際的な単位の表記法は ISOで決められた SI単位系と言い
MKS単位を基本とした、長さはメートルで表現する必要があります。
どうしてもインチ系の数値で表現したい場合は、型という表現で
単位ではないので間違いではなく、それまで定着したインチの値を
使用している例があります。 テレビのブラウン管サイズなどは
その代表例で、以前は 21インチと言っていたのを今は21型と
称していますね。チョットズルイ気もしますが。
しかし実際には米国ではいまだインチを使っています。とっくに
単位系は移行したはずなのに。
CCDセンサがインチを使う理由は、以前の画像を撮影する撮像管
(ブラウン管と逆の動作の画像を電気信号に変換する素子)
がその管の直径で表記してきたことからこれにならったようです。
1インチは 25.4mm ですが、もともとは撮像管の管の直径で
呼んでいたため、例えば 1インチ管の撮影画像範囲はこれより
小さく対角線は 16mmでした。 この対角線の大きさが等しい
CCDセンサを 1インチセンサと呼ぶようになったことで、
対角線とインチ表示の数字は一見関係ない値になっています。
この画像の大きさが同じものを同じサイズで呼ぶことにより、
同じサイズの撮像管とCCDセンサには同じ光学系で対応できる
という便利さがあり呼び方を継承しているようです。
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